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451:万葉線の除雪電車(デ5022)

2012/02/10 (Fri) 23:01
 これまで撮影してきた車両で、最も難易度の高い(撮りにくい)車両は断トツで相鉄モニ2000形でした。それでもある程度は運転日の予測がついたのですが、これ以上に難易度が高く、現地に行くまで走るかどうかも分からない車両がいます。
 それが万葉線の除雪用車両(車籍があった当時はデ5022)です。積雪が電車の運行に影響すると判断されると、始発前に運転されるのですが、雪が相手では万葉線に聞いても、デ5022が運転されるかどうか事前に分かるわけがありません。天気予報を自分のスケジュールと比べてチェックし続け、富山県西部(伏木)の降水(雪)確率が80%になった2月9日に、空振りを覚悟で行ってきました。

 大阪からですと、「きたぐに」では間に合わない、というか、この数日の豪雪で「きたぐに」と「日本海」は運休が続き、前日の最終「サンダーバード45号」で高岡に向かいます。近江塩津や新疋田辺りで吹雪に見舞われ、「これは高岡もいける」とひとり喜んでいたのですが、予想に反して福井も金沢も高岡も雪が時折ぱらつく程度で、高岡駅前に至っては、万葉線の走る通りの雪はスプリンクラーであらかた融けていました…。
高岡(2012.2.9)

 それでもここまで来たんだからと、3時30分過ぎにホテルを出て、万葉線に沿って歩いていきます。高岡駅前から坂下町あたりまでは商店街で街灯も多く、意外に明るいです。坂下町を過ぎてそろそろ本丸会館前…という頃、遠くに見える街灯の一つが動いているように見えました。
 「もしや!」と思いカメラを取り出すと、果たしてデ5022がゆらゆらとこちらに近づいてきました。三脚(私は普段三脚を使用しないので、一昨年買ったままになっていたのを初めて使いました)を立てる間もなく、手持ちで撮影しましたが、ほとんどの画像が手ブレしていました。いつもならボツ画像ですが、辛うじて見られる1枚を載せます。
本丸会館前~坂下町間(2012.2.9)

 デ5022は意外にもスピードが速く、高岡駅前へ去っていきました。驚いたのは、朝4時でもデ5022を追いかける同業者の車が5台もいたことで、撮影しては車で追い越し、を繰り返していました。歩いているのは私だけでした。
 デ5022の後を追って、除雪車(グレーダー)が来ました。万葉線もグレーダーを1台所有しており、除雪する場合でもこれだけで済ませる場合もあるそうですが、やってきたのは万葉線ではなく地元の建設会社と思しき社名の入ったものでした。
 片原町の交差点で三脚を据えて待っていると、片原町電停から「電車が、高岡駅前を出ました」という自動放送が聞こえてきました。こんな時間でも自動で動くようになっているのに驚きましたが、おかげでデ5022の動きがよく分かり、撮影しやすくなります。デ5022が末広町電停に停まっている間、先ほどのグレーダーが来て線路上の雪をかいていきます。 
末広町~片原町間(2012.2.9)

 続いて高岡駅前から折り返して来たデ5022。見ての通り、除雪はグレーダーが済ませているので、全く雪かきになっていません。恐らく、除雪後も軌道に残る雪を踏み固めることと、ポイントに残った雪を取り払う(これはデ5022ではなく、乗務員が降りてきて行います)ために走るものと思います。それでもスノープラウに雪が付いているのは、米島車庫を出て、先に専用軌道のある越ノ潟方面の除雪を済ませて来たからだと思います。専用軌道にグレーダーは入れないので、ここはデ5022の独壇場です。
末広町~片原町間(2012.2.9)

 私の周囲にいた同業者は、皆すぐに車に乗って追いかけていきます。車道はスプリンクラーやグレーダーのおかげで雪はほとんどなく、私もタクシーを拾って追いかけようかと思いましたが、寒さと眠さもあり、ホテルに引き揚げようとしました。見ると、デ5022は坂下町で信号待ちのため停まっています。慌てて走って追いかけ(商店街はアーケードがついているので、雪に関係なく走れるのです)、発車直前のところを後追いで撮影し、これでお開きにしてホテルに戻りました。 
坂下町(2012.2.9)

 デ5022つまりデ5010形は、昭和25(1950)年から翌年にかけて、富山地方鉄道が30両(他に同形態のデ5000形4両があった)製造した車両で、メーカーも4社にまたがりますが、デ5022は日立製作所製です。高床車でありながら乗降ステップ付きという特長を生かして、富山地鉄では射水線・笹津線(いずれも廃線)から市内線直通に使用された他、高岡軌道線(地鉄高岡〔現高岡駅前〕~新湊〔現六渡寺〕間)にも乗り入れました。昭和34(1959〕年に高岡軌道線を引き継いだ加越能鉄道にも最大14両が移籍し、富山地鉄との間で移籍と復帰が行われて最終的にデ5021~5026の6両が加越能に残りました。これも昭和46(1971)年までに廃車されたのですが、デ5022は昭和42(1967)年に除雪車に改造され、他の車両よりも出力が強いこともあって生き残り、平成14(2002)年に加越能から現在の万葉線に経営移管された後も、除雪用に使われてきました。平成4(1992)年には車籍を抹消され、車体の車番表記も消されて現在は名無しの除雪用機械という扱いになっているため、除雪(スノープラウだけでなく、車内から線路上に融雪剤を散布できるようになっている)以外には試運転でもない限りは、米島車庫で寝ています。(名無しではかわいそうなので、このブログではデ5022と表記します。)
 それだけに、イベントで車庫が公開されると、後輩のアイトラムや猫電車をしのぐ人気者で、入換えで動いただけで歓声が上がります。その「元」デ5022も遂にこの冬で引退というニュースが流れ、意を決して訪問したわけですが、万葉線では保存を検討しているとはいえ、車体の状態から動態保存できるかどうかは「?」だと思うので、除雪に頑張る姿を撮れてホッと一息というところです。思えば前に「走行も撮りたい」とこのブログに書いてから、5年目にしての宿願達成です。
 ホテルをチェックアウト後、電車で米島口まで行くと、米島車庫ではデ5022はいつもの場所で寝ていました。手前にいるのが万葉線所有のグレーダーです。
米島車庫(2012.2.9)

 この日は昼前から再び雪が降り始め、一時は吹雪に近い状態になりました。
新能町~米島口間(2012.2.9)

 アイトラムが動きにくくなるほど積もってくれれば、デ5022が昼間にも本線に出てくる可能性が出てきます。とはいえ、実際に乗ってみると、多少の雪ではアイトラムはびくともせず、こんな状況でもデ7070形より加速や乗り心地もよかったのでした。
新吉久~能町口間(2012.2.9)

 沿線で適当に撮影してから、米島口に戻ると、驚いたことにデ5022がパンタを上げ、車庫の出口近くまで出てきていました。これは本線に出るか!と興奮気味にカメラを構えましたが、次の瞬間、再び奥に戻り、再びパンタを下ろしてしまいました。出庫準備はしたものの、グレーダーだけで除雪できると判断されたようです。事務所に戻ろうとする係員氏に聞くと「この程度じゃ走らない」とのことでした。以前に撮影に来た人によると、こういうことはよくあるそうです。
米島車庫(2012.2.9)

 代わりに、グレーダーが大活躍でした。鉄道車両ではありませんが、こちらの走行シーンも撮影できたので、潔く諦めて米島口を後にしました。
 高岡市と射水市が出した「万葉線活性化総合連携計画」には、「除雪車両を更新する」とあるのですが、前述のようにグレーダーだけでは専用軌道区間の除雪ができないので、新車を製作するのか、引退が進むデ7070形を改造するのか非常に気になります。 
新能町~米島口間(2012.2.9)

 話は変わって、万葉線では、2月1日からアイトラムのうちMLRV1005が「ラッピング電車」になりました。2月24日から高岡市美術館で開催される「松原秀典原画展」のPRのためとのことです。
片原町(2012.2.9)

 それよりも、アイトラムには現在正面にこのような万葉線開業10周年ステッカーが貼られており、編成ごとに色が異なります。私にとってはこちらの方が気になります。
(2012.2.9)

 「ラッピング電車」に乗車する機会がありました。外観だけなら他にも同じような観光PRラッピングをした車両もいるのですが、車内にも松原秀典氏(高岡市出身の『エヴァンゲリオン』などのアニメーター)が描いたキャラクターの等身大ステッカーが貼られていました。
(2012.2.9)

 しかし、万葉線は吉久あたりから北(越ノ潟方面)に行くとほとんどガラ空きになり、車内で周囲に気兼ねなく撮影できるほどでした。雪の日は多少は混むだろうと思っていたので意外でした。
(2012.2.9)

 デ5000・5010形に話を戻しますが、加越能だけでなく富山地鉄に残った仲間も笹津線(昭和50年)、射水線(昭和55年)廃止で全車が廃車され、野上電鉄に譲渡されてデ10形となった3両も野上が平成6(1994)年に廃止されて運命をともにしています(余談ながら、このデ10形は私がこれまでに乗った電車の中で最も乗り心地の悪い車両です。恐らく線路と車両の両方に整備が十分に行えていなかったのでしょう)。公園などに静態保存された車両も既に撤去解体済みで、車両として残っているのは、まさにデ5022だけなのです。検討されているという保存は動態なら言うことありませんが、静態でもいいので、念入りに整備した姿で残してほしいと切に願います。

 デ5022については「いばらぎや」(左側のリンクコーナーからお入り下さい)管理人の入間郡さんに色々とご教示を頂きました。厚く御礼申し上げます。
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